無体財産

形ある有体財産であれば持ち主が自由に使う権利を持つことは理解が容易です。有体財産のうち、価値が高い一方で誰が所有しているのかを一目でわかりにくい土地などについては、法務局に登記されることで所有者(権利者)が明確になっています。

知的財産権の対象であるアイデアは形がないので無体財産と呼ばれます。無体財産そのものは所有独占といった概念でとらえることが難しく、そのものでは誰のものと言いにくいという特徴があります。
そこで、例えば発明であれば、特許出願によってアイデアの範囲を明確にして特許庁に登録することで、特許権としてアイデアや所有者を明確化しているのです。そう考えると、出願・登録によって明確になる知的財産権は、登記によって明確にされている土地と似ているように思われます。
土地であれば家を建てるなどの(法律等の範囲内で)自由に使ったり、他人に貸し出したり、または勝手に使っている人を追い出したりすることができます。同様に、知的財産権も自分の権利の範囲ではアイデアを自由に使うこともできますし、他人に貸し出す(許諾する)ことも、勝手に相手にアイデアを使う他人の行為を差し止めることもできるのです。

土地との違い

一方で、知的財産権が土地とは違うところはどこでしょう。
大きな違いの1つは、著作権などの例外を除けば、自分の意志で権利を成立させようと思わない限り、その権利が発生しないでしょう。
特に特許では新規性という出願の時点で世の中にない新しいものでなければならないという条件が課されるため、商品などを販売した後から権利を取得することはほとんど不可能です。特許出願もせずに販売をするこいうことは、本人が特許を取れないだけではなく他の人も特許を取れないということになるため、いわば特許を取らずにアイデアを公開し、誰もが自由に使えるようにしたようなものです。

また、土地はよほどの事情がない限り半永久的に存在しますが、知的財産権は一定の期間をもって消滅します。
例えば特許権であれば出願から原則20年。最も長い著作権でも著作者の死後50年、映画なら原則公表から70年です。
権利が消滅した後には、その知的財産は誰でも自由に使えるようになるのです。ジェネリック医薬品青空文庫は、このようにして権利が消滅した知的財産を活用した例です。

有効活用

誰かの土地を借りて商売をしているときには商品に土地代分を乗せなければなりませんが、公共の場所では場所代がほとんどかからずに、商品の価格を下げることができます。一方で、土地を持っていれば、他人に貸すことで利益を得ることも可能です。
知的財産を土地のように考えると、知的財産の権利化や活用にも積極的に取り組んでいくことが必要であるとわかります。

土地の区画

富澤 正

弁理士。当サイト『開発NEXT』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)