予想された「希望の党」

政治の世界では衆議院解散、民進党が希望の党に合流など新聞の紙面を賑わしています。小池東京都知事が作った「希望の党」。「都民ファーストの会」から「国民ファースト」となるのではないかとの憶測などの話もありましたが、最終的に「希望の党」に落ち着きました。

実は「希望の党」になるのではないかという話は、知的財産業界では先に噂になっていました。というのも、小池東京都知事が今年2月「都民ファーストの会」と一緒に「希望の党」を商標登録出願していたのです。
商標登録出願は、出願後にその内容が必ず公開されます。公開されるリスクをとってでも商標登録出願をしたのは、関係ない第三者が先に商標登録出願をして商標権をしまうことを防ぐためだと思われます。商標制度の基本は早い者勝ちです。政党名を決めた後で他人に商標権をとられていました、では格好がつかないので、予め出願をしておく必要があったのです。

他人に出願された政党名も

日本維新の会」や「民進党」などにについては、政党に関係のない第三者が商標登録出願をした事例があります。
商標法では他人のよく知られた商標については審査で拒絶されることとなっており、公表した後の出願によって他人に商標登録されるとは考えにくいのですが、仮に他人の出願で商標が登録されてしまうと、その商標の使用が制限されてしまいます。
まして、政党名ともなると、活動とまったく関係のない商品や役務(サービス)に関しての商標登録だったとしても、イメージダウンがあるかもしれません。

党のほか「塔」の名前も

話は変わって東京スカイツリーの名称は公募で決められたことをご存知でしょうか。
名称の最終決定の際には当然、商標登録調査が行われています。この調査の際にヒットしたものとしては「大江戸タワー」「新東京タワー」等、公募を知りながら先取りを狙って出願されたと思われる商標がいくつもあったそうです。
最終的には誰もが予想しなかった「樹」を意味する「ツリー」を用いて「東京スカイツリー」が採用されました。塔=タワーという既成概念を超え、「樹」という独創的なネーミングをすることによって、先にされた商標登録出願を回避し、無事に商標登録を受けてサービスを開始しました。
公募の際には大々的なネーミングが行われることが広く知られてしまうため、第三者が予想した名称を利益目的で商標登録出願してくるケースがあります。したがって、公募であることを踏まえて、商標登録についての戦略を立てておくことが重要となります。

なお、戦略的に商標登録を果たした東京スカイツリーですが、中国では直訳「東京天空樹」の登録ができませんでした。同商標を第三者が登録してしまっていたので、直訳でない「東京天空塔」を登録しています。

今回は「党」と「塔」の名前を通して商標登録出願の先願主義(=早い者勝ち)をみてみました。必要ならなるべく早く出願する、先に出願されそうなら回避策を打つ、など、ネーミングに際しての商標登録戦略の重要性を再確認できます。


本記事は執筆者が2017年10月2日 中部経済新聞に寄稿した内容を当サイト用に再編集したものです。

富澤 正

弁理士。当サイト『開発NEXT』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)