工場内の問題に取り組んで

愛知県豊田市にある有限会社勝田工業は、設備メーカーの設計製造を請負う企業。請負業が中心であった同社が満を持して開発したのは、油水分離機です。製造工程で必然的に混ざってしまう水と油を分離する装置です。
新開発した製品は従来の製品と比較して効率良く油水を分離できる上に小型化にも成功しており、特許出願もしているのです。本製品は本業の設計製造業務ではないものの請負元の設備メーカーが導入してもらえるまでに成長しているそうです。

元々、この製品を開発した経緯としては、工場内にあった従来の油水分離機の性能が思わしくなく、しかも大型で場所の確保に困っていたことにあるといいます。この問題点を解決するために自社技術を動員して開発を始めたそうです。
同社は油水分離機にとどまらず、スポットクーラーについてもある問題から、自社開発をしています。

モノづくり企業には技術力があります。技術力があるからこそ請負元からの仕事を受注し経営をしてきているのです。
しかしながら、その技術力を使って自ら製品を作るところは多くはありません。中には、技術力はあるものの、何を作るのかを見出せないところもあるでしょう。何を作るか決められないときには同社のように身近な問題点を解決することを考えるのも一策です。自社が困っていることは同様に他社も困っています。その問題を解決することができれば需要の必然があり、開発から製品化へと繋げられる可能性もあるのです。

空いた時間に作ってみる

請負い業務が中心であった同社がなぜ自社開発や製品化をしたのか、勝田清俊会長に尋ねたところ、「不況で請負業務が減ったときでも自社製品で活路を見出し、従業員そしてその家族が生活していける製品を作りたかったから」だと話します。
リーマンショックを経験し豊田市内の中小企業の多くが不況の影響を受けました。そうした経験の中から自社製品を作りたいという考えに行きついたのです。

上述したように自社で困っている製品を作る場合には、作ってそのまま自社の役に立てることができます。例え製品が売れなかったとしても工場の現場にとっては確実にプラスになるためリスクが少ないと感じました。

また、自社製品を作り出すことができ、特許出願をすることになったということが、会社の自信にもつながったといいます。自社製品を作り出すことは会社の気持ちも変えるのだとも感じました。

最後に、勝田会長は「製品を作ったのは時間があったから」とも話してくれました。私はこの話を聞いてモノづくり企業の可能性を感じました。空いた時間に実際に製品開発をできるような能力を持つ企業であれば、今後も身近なところの問題点を解決する製品を作り続けられます。製品を作り続けることができれば社員が生活できる製品も作り出すこともできると感じました。空いた時間に自社技術を活用する、身近な問題点を糸口に製品開発をする、ということで、中小企業の新しい道を拓くことができるのだと感じました。


発明者の勝田清俊会長

有限会社 勝田工業

富澤 正

弁理士。当サイト『開発NEXT』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)