今回は、花王株式会社に約15年勤務したのち独立し、現在は商品開発コンサルタントとして活躍されている美崎栄一郎さんを迎えて、中小企業の商品開発についてお話を伺います。

26_large
美崎栄一郎氏

中小企業のものづくりは、”飛び地”をしないことが大切

大企業と中小企業の両方でヒット商品やロングセラー商品の開発に携わった美崎さんは、大企業と中小企業におけるものづくりには着眼点に大きな違いがあると教えてくれました。

商品開発をする際、もっている商品や市場の将来性の懸念から、既存の商品や市場と全く違う分野、いわゆる”飛び地“を狙おうとする企業が多いと思います。
実際、世の中を見渡してみると、機械系メーカーが化粧品を発売するなど、全く新たな商品で新しい市場を開拓している事例も見受けられます。

しかし、それらは成功例のほんの一部。商品を開発し、発売するまでにはいくつものハードルを越えなくてはなりません。
予算にも人材にも余裕がある大企業でない限り、膨大な開発予算を捻出したり、時間をかけて開発を遂行することは、現実的ではないのです。

特に中小企業の開発においては、既存の技術をベースにした開発をするか、既存の市場で発売できるものを考えるようにして、ハードルを少なく低くすることが求められます。

自社の優位性に着目し、プラスアルファで開発をする

では、どこに目をつけて開発をすればいいのでしょうか。

自社のニーズや、他社と差別化できるところ、競争優位である部分を探すことからはじめます。
例えば、現在商品が売れている場合は、その技術の延長線上で開発できる商品を考えるのです。今ある商品へのプラスαであれば、市場開拓のリスクが少なく、技術開発の時間も比較的抑えられる。

さらに、商品数が増えることで全体の売上も大きく伸びます。
例えば、洗濯用洗剤をつくる技術に競争優位がある企業は、それを購入した人が必要とする衣料用柔軟剤や衣料用漂白剤を開発するなどです。

また、これまで上流メーカーからの受託生産を中心に行ってきた会社でも、自社の得意分野がきっとあるはずです。
例えば、機械の一部となる小さいパーツを受注生産してきた企業は、その小さいパーツを作る技術の延長線上で何か開発できないか考えてみましょう。

開発力に自信のある企業は、売り先を変えるのではなく、既存の市場で売れる商品を模索することもおすすめします。

ものづくりの根底にあるのは「経営課題を解決して企業を成長させたい」という想い。
開発者と経営者両方の視点を持つ美崎さんならではの商品開発戦略はとても参考になると思います。

美崎さんはビジネス書の著者でもあり、「美崎栄一郎のヒットの謎解き 元花王の開発者が解き明かす、ヒットの飛ばし方。」(日経BP社)など、ものづくりに関する書籍も上梓されていますので、ぜひ読んでみてください。

美崎栄一郎氏 Webサイト – http://note272.net/

富澤 正

弁理士。当サイト『開発NEXT』および同タイトルのフリーペーパーの編集主幹。
■経歴
知財コンサルタント。コスモス特許事務所パートナー。名古屋工業大学非常勤講師。
1980年愛知県生まれ。名古屋工業大学大学院修了。
特許業務の傍ら、知的財産の執筆活動・講演活動などを行う。自身の知的財産権を活かしてアイデア商品を作るベンチャー企業Time Factory株式会社を設立し、資格試験の受験生向けの商品などを手掛ける。
■専門分野
知財ビジネスマッチング、開放特許活用戦略、知財を活かしたビジネスモデル作り
■著書
『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社)
『理系のための特許法・実用新案法』(中央経済社)
『理系のための意匠法』(中央経済社)
『理系のための商標法』(中央経済社)
■連載
『日経産業新聞』にて連載 (2017.5.12~20217.5.20)
『中部経済新聞』「みんなの特許」を毎週月曜日に連載中 (2014.4~現在)『サンケイビジネスアイ』「講師のホンネ」にて月1コラム連載 (2013.5~2014.1)
『日刊信用情報』にて「知財コンサルタント富澤正の「知的財産権を極める」」を週1コラム連載 (2013.9~2014.8)